運動や勉強、早起きなど、始めたときはやる気があったのに、気づくとやめている。そのたびに「また続かなかった」「自分は意志が弱い」と、自分を責めてしまう人は少なくありません。
けれど、習慣化できない原因は、意志の強さや性格だけでは説明できません。心理学の研究からは、習慣にはできあがる仕組みがあり、その仕組みに合っていないやり方では、誰でも続きにくいことがわかってきています。
この記事では、習慣化できない理由を6つに分けて整理し、それぞれに試したい工夫を紹介します。挫折した経験を責めるためではなく、次の方法を見直すための材料として読んでみてください。
この記事でわかること
- 習慣化できないのは、本当に意志が弱いからなのか
- 習慣化できない6つの理由と、試したい工夫
- 習慣になるまでにかかる日数と、1日休んだときの影響
習慣化できないのは意志が弱いから?

続かないと、真っ先に自分の意志の弱さを疑ってしまいがちです。けれど研究を見ていくと、続けられるかどうかは、意志の強さだけでは決まらないことがわかります。ここでは、やる気・自制心・習慣の関係を順番に確かめていきます。
やる気が高まっても、行動はそこまで変わらない
やる気があることと、実際に続けられることは別ものです。
やるつもり(意図)を高める工夫をした実験47件をまとめた分析では、やる気の変化に比べて、実際の行動の変化は半分ほどにとどまっていました[1]。モチベーションを上げても、それだけで行動がついてくるとは限らないのです。
続かないのは、やる気が足りないからとは限りません。だからこそ、やる気をさらに高めようと頑張るより、やる気に頼らなくても動ける仕組みをつくるほうが近道になります。
自制心が強い人は、我慢より習慣で動いている
続けられる人は、我慢が得意な人というより、我慢しなくて済む習慣を持っている人なのかもしれません。
ドイツで大人205人の毎日の欲求を記録した研究では、自制心が強い人ほど、欲求をこらえる回数がむしろ少ない傾向がありました[2]。また、自制心が強い人ほど、勉強や運動、睡眠などの良い習慣を持っていて、それが成績などの結果とのつながりを説明していた、という研究もあります[3]。
どちらも、自制心のある人が強い意志で誘惑に勝ち続けている、という見方とは違う姿を示しています。続けている人は、毎回の努力だけでなく、習慣の力を借りているのかもしれません。
そもそも習慣とは、考えなくても始められる状態のこと
習慣とは、同じ場面で繰り返すうちに、その場面がきっかけになって、半ば無意識に体が動くようになった行動のことです[4]。たとえば、朝起きたら歯をみがく、家に帰ったら手を洗う、といった行動は、毎回やる気を出さなくても始められます。
実際に、食べる・飲む・運動のうち1つの行動を、毎日決まった場面でくり返した研究では、続けるうちに、意識しなくてもできる状態に近づいていきました[5]。
習慣ができると、疲れていて余裕がないときにも、いつもどおりに動きやすくなるという研究もあります[6]。忙しい時期ほど、習慣が支えになってくれるということです。
つまり、習慣化できないときに見直したいのは、意志の強さよりも、決まった場面でくり返せているかどうかです。
脳が変化を嫌うから続かないって本当?
習慣化について調べると、脳は変化を嫌うから新しいことが続かない、という説明をよく見かけます。その根拠として、ホメオスタシスや現状維持バイアスという言葉が使われることもあります。
ただ、この2つの言葉は、もともとは次のような意味で使われています。
どちらも、変化しにくさをイメージするたとえとしてはわかりやすい言葉です。ただ、新しい習慣が続かない理由を直接調べた研究ではありません。脳のせいだとあきらめる前に、次に紹介する6つの理由のどれに当てはまるかを見てみてください。
習慣化できない6つの理由

習慣化できない背景には、多くの人に共通するパターンがあります。性格の問題と決めつける前に、やり方と仕組みを見直してみる価値があります。先に全体を表で整理しておきます。
| 理由 | よくある例 | 試したい工夫 |
|---|---|---|
| 1. 目標が大きすぎる | 毎日1時間勉強すると決めた | テキストを1ページ開くだけ、まで小さくする |
| 2. いつ・どこでやるかが決まっていない | 時間があるときにジムに行こうと思っている | 仕事帰りに駅を出たら、のように場面を決める |
| 3. 生活の環境が変わった | 引っ越しや異動のあと、朝のウォーキングが途切れた | 新しい生活の中で、きっかけになる場面を決め直す |
| 4. やっている最中が楽しくない | 役に立つからと、つらい筋トレだけを選んでいる | 楽しめる方法を選ぶ・好きなことと組み合わせる |
| 5. 1日できないと「もうダメだ」と思う | 早起きに1日失敗して、そのままやめた | 休んだ次の日の戻り方を決めておく |
| 6. 力や環境が足りていない | 英語を勉強したいが、何をやればいいかわからない | やり方を調べる・道具をそろえるなど、先に準備を整える |
1. 目標が大きすぎる・手間がかかりすぎる
やる気がある最初のうちは、つい一気に高い目標を設定しがちです。けれど、毎日1時間の勉強や、毎朝5kmのランニングのように、ハードルの高い目標は、忙しい日や疲れた日に続けられなくなります。
医療者向けの解説論文では、失敗すると気持ちがくじけてしまうため、小さく取り組みやすい変化から始めることがすすめられています[9]。水を飲むような単純な行動は、腹筋のような手間のかかる行動より早く習慣になった、という研究結果も紹介されています[5][9]。
試したい工夫
勉強を習慣化したいなら、テキストを1ページ開くだけ、英単語を5分だけ、くらいの簡単な目標から始めてみてください。無理なくできて少し物足りないくらいがちょうどよく、できた日が増えるほど、自信にもつながります。
2. いつ・どこでやるかが決まっていない
習慣は、決まった場面がきっかけになってできあがります。そのため、時間があるときに運動する、気が向いたら読書する、という決め方では、きっかけになる場面が生まれません。
そこで役立つのが、もし〜したら、〜すると具体的なルールを決めておく方法です。94件の研究をまとめた分析では、いつ・どこで・どうするかを決めておくと、目標を達成しやすくなっていました[10]。
試したい工夫
運動を習慣化したいなら、仕事帰りに駅を出たら一駅分歩く、朝コーヒーをいれたらストレッチをする、のように、すでに毎日している行動とセットにするのがコツです。
この方法は、やらなければいけないことをつい後回しにしてしまうときにも使えます。先延ばしの理由と工夫は、先延ばし癖はなぜ直らない?心理学から考える6つの理由と、自分を責めずに動く工夫で紹介しています。
3. 生活の環境が変わった
前はできていた習慣が、引っ越しや転職、異動をきっかけに途切れてしまうことがあります。これも、意志が弱くなったからではありません。
大学を移った学生115人を調べた研究では、運動や新聞を読むといった習慣が転校後も続いたのは、行動する場所や一緒にいる人などが、前と変わらなかった場合でした[11]。習慣は、それまでの生活の中にあったきっかけと結びついているため、環境が変わるとそのきっかけを失いやすいのです。
試したい工夫
生活が変わったときは、前と同じやり方を取り戻そうとするより、新しい生活の中で、きっかけになる場面を決め直してみてください。たとえば、新しい職場の昼休みに5分歩く、のように場面を具体的にしておくと再開しやすくなります。
4. やっている最中が楽しくない・効果を感じにくい
健康のため、仕事のため、と将来のメリットを理由に始めたことは、効果がすぐに見えないと続けにくくなります。
研究では、将来のメリットよりも、やっている最中に楽しいと感じられるかどうかのほうが、続くかどうかと結びついていました[12][13]。いちばん効果がありそうな運動より、いちばん楽しめそうな運動を選んだ人のほうが、長く続いたという実験もあります[12]。
試したい工夫
つらい筋トレだけを選んでいるなら、好きな音楽を聴きながら歩く、友人と一緒に体を動かすなど、楽しめる方法に変えてみてください。スキンケアや読書なども、気分が上がる道具や場所を選ぶなど、楽しめる工夫を取り入れてみるのも一つの方法です。
5. 1日できないと「もうダメだ」と思ってしまう
早起きに1日失敗しただけで、「もうダメだ」とすべてやめてしまう。こうした0か100かで考える心のクセは、考え方のかたよりの一つとして知られています[14]。
けれど、習慣づくりを毎日記録した研究では、1日やらなかった日があっても、その後の習慣化にはほとんど影響しませんでした[5]。1日の失敗で、それまでの継続が消えてしまうわけではないのです。
ただし同じ研究では、1週間ほど続けて空いてしまうと、その後続けにくくなる可能性にも触れています[5]。大切なのは、休まないことより、休んだあとに早めに戻ることです。
試したい工夫
休んだ次の日は、いつもより小さくてもいいので再開する、と先に決めておいてください。5分だけ早く起きる、ストレッチを1つだけする、くらいで大丈夫です。1日できなかった自分を責める必要はありません。
6. 続けるための力や環境が足りていない
英語の学習を始めたいのに何から手をつければいいかわからない、運動したいのに着替えや道具の準備が苦手。こうした場合、やる気の前に、続けるための準備が足りていない可能性があります。
行動科学では、行動が起きるには、能力(やり方を知っている・できる力がある)、機会(時間や場所、道具などの環境)、動機づけの3つが関わる、と整理する考え方があります[15]。ここでいう動機づけには、意識して頑張る気持ちだけでなく、習慣や感情も含まれます。
試したい工夫
続かないときは、気持ちの問題だと決めつけず、やり方を調べる、道具を手の届く場所に置く、スマホの予定に時間を確保するなど、先に準備を整えてみてください。準備を先に済ませておけば、始めるときの手間や心理的な抵抗を減らせます。
習慣になるまで何日かかる?21日説と研究の比較

新しい行動が習慣として定着するまで、何日続ければいいのかは気になるところです。ここでは、よく聞く21日説と、研究でわかっていることを比べてみます。
21日で習慣になる説は、根拠がとぼしい
21日続ければ習慣になる、という説は広く知られていますが、習慣を研究する専門家からは、根拠のとぼしい俗説だと指摘されています[9]。
もとになったのは、1960年に出版された自己啓発書で、整形手術を受けた人が新しい外見に慣れるまで、およそ21日かかったという観察の話だとされています[9]。行動が習慣になるまでの日数を測ったものではありません。
21日続けても習慣になった実感がなくても、それは失敗ではありません。
研究では中央値66日、ただし人によって大きく違う
食べる・飲む・運動の行動を毎日くり返した研究では、意識しなくてもできる状態に近づくまでの日数は、中央値で66日でした。ただし、早い人で18日、遅い人では254日と推定され、人によって大きな差がありました[5]。
健康にかかわる行動の研究をまとめた2024年の論文でも、習慣ができるまでの期間は中央値で59〜66日、人によって4日から335日と幅がありました。研究者は、2〜5か月くらいはかかるつもりで取り組むのがよい、としています[16]。
| よく言われる日数・研究 | わかっていること |
|---|---|
| 21日で習慣になる説 | 整形手術後の外見に慣れるまでの観察がもとで、習慣になるまでの日数を測ったものではない[9] |
| 2010年の研究 | 中央値66日。ただし18日〜254日と、人によって大きな差があった[5] |
| 2024年のまとめ論文 | 中央値59〜66日、4日〜335日と幅があった。2〜5か月はかかるつもりで[16] |
つまり、習慣になるまでの日数を一律に決めるのは難しく、人によっても、行動によっても違います。何日続いたかを数えるより、考えなくても始められるようになってきたかを目安にしてみてください。
習慣化できないのは病気かもしれない、と不安なとき

何度やっても続かないと、病気や発達障害なのではと不安になることもあるかもしれません。ここでは、そうしたときの考え方と相談先を紹介します。
習慣が続かない理由はさまざまで、それだけで病気や発達障害かどうかはわかりません。たとえばADHD(注意欠如多動症)は、子どものころから続く特性があり、そのために生活の場で困りごとが生じている状態とされています[17]。発達障害の診断は、医療機関で行うものです[18]。
一方で、以前は楽しめていたことに関心が持てない、やる気が出ない状態が続いているときは、うつ病の症状のこともあります。こうした状態は、心が弱いからでも、甘えているからでもないとされています[19]。
生活に大きく困っているときは、ひとりで抱え込まずに相談できる場所があります。
| こんなとき | 相談先 |
|---|---|
| 気分の落ち込みや、やる気が出ない状態が続く | かかりつけ医、精神科・心療内科、保健所、精神保健福祉センター[20] |
| 子どものころから同じ困りごとが続いていて、発達の特性が気になる | 市区町村の障害福祉の窓口、発達障害者支援センター[21][22] |
| 働いていて、仕事のストレスなども気になる | こころの耳(電話・SNS・メールで相談できる)[23] |
習慣化できない理由に関するよくある質問
習慣化に取り組んでいると、一度やめた習慣の再開のしかたや、取り組む時間帯など、細かな疑問も出てきます。ここでは、よく聞かれる5つの質問に、研究でわかっていることをもとに答えます。
習慣化できずにやめてしまったら、どう再開すればいい?
新年や月初め、週の始まりのような区切りの日は、始めたい気持ちが高まりやすいことがわかっています。実際のデータでも、こうした区切りのあとには、ダイエットの検索やジムに通う人が増えていました[24]。
ただし、区切りの日に始めれば続く、ということまでは確かめられていません。再開するときは、前と同じ目標に戻すより、前より小さな目標から始めるのがおすすめです。
運動や勉強が習慣化できないのは、やることの種類のせい?
行動の種類よりも、手間の少なさのほうが大きく関わっているようです。水を飲むような単純な行動は、腹筋のような手間のかかる行動より早く習慣になりました[5][9]。一方で、食べる・飲む・運動という種類のあいだでは、はっきりした差は見られませんでした[5]。
運動でも勉強でも、最初は手間の少ない形に分けて始めると、習慣にしやすくなります。
習慣化しやすいのは、朝と夜のどちら?
学生48人を、起きてすぐストレッチをする組と、寝る前にストレッチをする組に分けた研究では、朝の組のほうが早く習慣になると推定されました[25]。
ただ、研究は1つだけで、人数も多くありません。朝のほうが必ずよいとは言えないため、自分の生活の中で、毎日同じ流れがある時間帯を選ぶのが現実的です。
いくつもの習慣を同時に始めると、習慣化できない?
いくつかの行動を同時に変えるのと、1つずつ順番に変えるのとで、どちらがよいかは、研究でもはっきりしていません。比べた研究をまとめたレビューでは、どちらも同じくらいの効果と考えるべきだとされています[26]。
なお、目標が1つのときは具体的な計画が役立ったのに、目標が6つのときは役立たなかったという実験もあります[27]。これは習慣の研究ではなく、5日間の目標達成を調べたものです。負担を小さくするために、まず1つから始めるのも一つの方法です。
習慣化アプリは使ったほうがいい?
記録をつけることは、続ける助けになります。進み具合を記録すると目標を達成しやすくなり、記録を書き残したり、人に伝えたりすると、その効果が大きかったという分析があります[28]。
ただし、アプリの通知(リマインダー)だけに頼ると、行動はくり返せても、習慣にはなりにくかったという研究もあります[29]。アプリをやめたら行動もやめてしまった、という利用者の声も報告されています[30]。アプリを使うなら、朝食のあとに開く、のように、毎日の場面と結びつけて使ってみてください。
まとめ
習慣化できないのは、意志が弱いからでも、性格のせいでもありません。続けられる人は、我慢だけでなく、習慣の仕組みを味方にしていると考えられます。
習慣化できない6つの理由
- 目標が大きすぎる・手間がかかりすぎる
- いつ・どこでやるかが決まっていない
- 生活の環境が変わった
- やっている最中が楽しくない
- 1日できないと「もうダメだ」と思ってしまう
- 続けるための力や環境が足りていない
習慣になるまでには、人によって数週間から数か月かかります。1日休んでも、そこで終わりではありません。
ポイントは、一度にすべてを変えようとしないことです。まずは6つの理由から、自分に近いものを1つだけ選び、工夫を1つだけ試してみてください。ダイエットが続かないことに悩んでいる人は、ダイエットが続かないのはなぜ?意志の弱さだけではない心理と行動の仕組みもあわせて読んでみてください。
参考文献
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